【試乗記】アバルト 124スパイダー、このサソリの毒は、たとえ刺されても死にはしない…中村孝仁 | Spyder7(スパイダーセブン)

【試乗記】アバルト 124スパイダー、このサソリの毒は、たとえ刺されても死にはしない…中村孝仁

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アバルト 124スパイダー
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過去にもアバルトと名の付くモデルは何台か乗ったことがある。どのクルマもその時代に照らして考えれば、相当に過激なモデルばかりだった。俗にサソリの毒がある…というやつだ。

しかし、『アバルト124スパイダー』に乗って得た印象は、そのサソリの毒はだいぶ希薄になったということであった。現状、フィアット500ベースのアバルトでも『595』だろうが、まして『695』になると、そのやんちゃぶりは相当なものだ。ところが124スパイダーはというと、それが実に運転しやすく、快適なのである。

ご存知の通り、124スパイダーはマツダ『ロードスター』をベースにその心臓部分にフィアット製1.4リットルのマルチエアターボユニットを搭載したもので、その生産も広島のマツダ工場で行われているから、言わば和製アバルトともいえるクルマである。そして、じゃあロードスターとはどこがどう違うのよ?と言われると、まずは心臓。それに足回りのチューニング。そして何よりもそのデザインとインテリアのセンス。まあ。インテリアに関しては至る所にマツダ、見っけ!的な部分もあるのだが、程よいイタリアン・センスでまとめられていると評してよいと思う。

1.4リットルマルチエアのターボユニットはかなり歴史の古いエンジンで、すでに2009年のアルファロメオ『MiTo』で採用されていたもの。吸気側のカムシャフトをなくし、代わりに電子制御されるピストンでバルブを開閉させる。このため、バルブのリフト量はいかようにも設定出来るし、スロットルバルブを閉じる必要がないのでポンピングロスも減じることが出来るという画期的な構造で、2010年のエンジンオブザイヤーに選ばれたエンジンだ。

日本のマツダ・ロードスターは1.5リットルNAの131ps。対するアバルトは170psで、特にトルクの方はロードスターの150Nmに対し、250Nmと圧倒的。その発生回転数だってロードスターの4800rpmに対して2500rpmだから、どっちがパワフルでイージードライブが可能かは火を見るよりも明らかである。というわけで、性格的にもだいぶ異なっていることは明々白々である。

実際にコックピットに身を沈めてみると、先ずシートがイイ。レカロ製の本革シートだが、サイドボルスターの抉りが深く、コーナリングの際の保持力が高い。ロードスターはレカロと共同開発したシートとされるが、そのあたりはアバルトと比べるとイマイチだ。赤く染められたレブカウンターも素敵だ。ステアリングはスポーク部分に関してはスイッチ類が多くなっている以外、基本的にマツダと同じだが、リムは明らかに太く、スポーティー。トランスミッションは共に6MTもしくは6ATがチョイス出来、試乗車は6MTだったが、そのギアレシオはロードスターとは全く異なっている。まあ、エンジンが違うのだから当然だが、ロードスターが6速で直結となるのに対し、アバルトは5速で直結。6速はオーバードライブレシオとされている。

アクセルストロークにも余裕がある。昔乗った『アバルト プント』など、アクセルストロークが非常に少なくて、案外エンストし易かった記憶があるが、そんな気を使う必要はまるでなく、スムーズな発進が可能であった。トルクはやはり低回転域から十分にモリモリと湧き上がり、引っ張ればグイグイと加速。逆にテンポよくシフトアップしてやっても、実に力強い、それでいてエコ運転が出来そうだ(燃費までは測っていない)。

現代のクルマだから乗りにくさとは無縁だが、例えばアバルト695や595のように、何故かいたずらに飛ばしたくなるといった類のクルマではなかった。大人しいといったら言い過ぎかもしれないが、このサソリの毒は、たとえ刺されても死にはしない。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

【アバルト 124スパイダー 試乗】このサソリの毒は、たとえ刺されても死にはしない…中村孝仁

《中村 孝仁@レスポンス》

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